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Yuki Nekomiya

Chocobo [Mana]

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小話: 儚き夜を胸に抱いて(10)

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 ころんとした、丸っこいフォルムである。薄い黄色の地に、濃い黄土色の縞模様が入っている。小さな口から見える鋭そうな牙に目を瞑れば、可愛らしいと言えないこともない。好き嫌いは好みが分かれるところとはいえ、少なくとも「万人に嫌われそうな外観」でないことは確かだ。
 とはいえ。
(……いや、でもなぁ……)
 純粋に信じ込んでいる若者には申し訳ないが、コレを「神の使い」と言われても、にわかに信じがたいところではあった。何しろ、「神の使い」という言葉から想像できるような、力強さも優美さも気高さもない。ついでに言えば、この丸い物体を『蛇』というカテゴリに入れる事自体、どうかと思ってるぐらいだ。さすがに言葉に出さない程度の分別は備えているが、ラサラスの正直な感想としては「なんだこれ」としか言いようがない。
(いや、でもなぁ……)
 たとえこれが黄色いナニカだとしても、若者の言が妄想に端を発していたとしても、陰謀の片鱗を暴いたというのは紛れもない事実だ。偶然の一致かもしれない、けれどもそんな偶然が何度も続くものか。
 加えてふと思い出したのは、遠く東方に伝わる言い伝えだ。野生動物でも家畜でもなく、魔物ですらもない、存在自体が不確かな……「丸い蛇」の存在。竜の幼体だという言い伝えらしいが、ラサラスどころか住民たちですら見たことがないらしく、だいぶ実在が疑われるシロモノだった。獲物を丸呑みにした蛇を見間違えたんじゃないか、とラサラスは思ったものだが、少なくともそうした噂が伝えられてきたことは確かだ。
 ならば、これは。
(……まぁ、いいけどさ)
 これがなんであれ、役に立ったのは確かだ。今はそれだけでいいと割り切って、得体のしれない黄色い物体をつつく。安定が悪いのか、何かのおもちゃのようにころんころんと揺れるのが面白い。
 ……その一分後。指先を思いっきりかじられ、悲鳴を上げるラサラスの姿があった。
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