Character

Character

Yuki Nekomiya

Chocobo (Mana)

You have no connection with this character.

Follower Requests

Follow this character?

  • 0

小説: Mirage Family (2)

Public
漆黒5.0ネタバレしかないので、未クリアの方は閲覧注意。
あと、救いがどこにもない話なので、そういうのが苦手な方もご注意ください。


Click to showClick to hide

 次の『彼女』はホルミンスターで生まれ育ったという娘だった。立地の問題もあり彼女の『保護』はクリスタリウムが行うことになったため、本来であればユールモア軍に属する自分が見(まみ)える事など不可能だ。だが、巫女とのつながりをどうしても得たいユールモア上層部は、自分を『護衛、兼、武術師範』の立場でねじ込み、同時に費用の幾分かを負担することで、彼女の居住地をクリスタリウムからオスタル厳命城へ引き出すことに成功した。
 もっとも、自分にとってはそれら政治的思惑はどうでも良いことだった。今度こそ自らの手で彼女を護ることができる、その一点だけが重要だった。
「よろしくお願いします」
 水晶色の双眸に、年齢にそぐわぬ聡明さを湛えた娘だった。かつての『妹』に比べても大人しく控えめで、はにかむ様に静かに笑う少女。戦うことなどこれまで一度も無かったであろう幼い少女に対し、ただひたすらに戦う術(すべ)を教え込むことについて、葛藤が無かったわけではない。
 けれど彼女は、いずれ戦場へと向かわざるを得ない身で。そんな彼女に自分が与えられるのは、今まで培ってきた、戦うための技術だけで。
 それでいいと思った。それしかないのだから、それで良いのだと。過酷な鍛錬の日々の果てに恨まれてもいい、教え込んだ技術が彼女の身を少しでも生き延びさせることに繋がるのであれば。生きて、そうして僅かでも幸せをつかんでくれたのなら、それだけで報われる。
 ……もっとも、そんな自分の願いには、彼女のほうでもすぐに気付いてたのだろう。さほど分りやすい優しさを表していなかったはずなのに、「先生、先生」と慕ってくれるそのさまは、在りし日の妹を容易に思い起こさせた。
 だから、かもしれない。それを思いついたのは、彼女が戦場に立つようになって暫くした頃だった。
「先生の養女に、ですか?」
「無理にという話でもない。ただ、そういう手段もあるかと思いついたのでな」
 水晶色の瞳をまんまるにした彼女に、きまり悪げに頷いた。思いついたときは良い案だと思ったが、今となっては早計だったかもしれないと後悔が過る。とはいえ、話を切り出したからには、提案を無かったことにはできない。一人前になった今も、自分を師として接してくれる彼女に、押しつけと受け取られないよう慎重に言葉を選ぶ。
「……お前の立場が不安定なのは、わかっているだろう」
「はい、先生」
 僅かに方向性を変えた話に、彼女が素直に頷いた。
 現在、彼女の最大の支援者はクリスタリウムとなっている。若く活気にあふれたあの都市は、独立独歩の気風ゆえか、彼女の力を初手からあてにすることはあまり無い。もちろん、戦力として活用はするのだが、頼り切らないとでも言うか。なるべくなら自分たちの手で守るという強い意思がそこにあるようだった。
 問題は、ユールモアだ。先代、先々代と続けて巫女を擁していたあの都市は、当代についても権益を持ちたいようで、何かと口うるさい。おかげで彼女の護衛に付くことができたので感謝の念もあるのだが、事あるごとにあれこれ要求を通そうとするその有様に、厚かましく見苦しいものがあることもまた、否めなかった。
 中でも一番の懸念点は、代替わりしたばかりの若きユールモア元首だろう。
 先代元首は、傑物と言っても良い人物だった。光の氾濫後、混乱に陥った世界の中で大国ユールモアを維持し続けたその手腕は、誰しもが認めるところだろう。『善人』ではないが『最善』を的確に選び続け、多くの人々を救いあげた。自分や父など異邦の業(わざ)を伝える者たちを保護し、配下として取り立てたのもそうだし、『光の巫女』を戦力として積極的に活用したのも、そうした選択のひとつだろう。先代元首を間近で見たことはそう多くはないので断言はできないが、情と理の双方をうまく使い分け、人々を動かす確かなカリスマがある人物のように見えた。気難しい父が多大な恩を感じ、心よりの忠誠を誓っていたのも納得だ。
 そんな偉大な先代元首と比較され続けるのだ、当代の元首が焦るのも無理はない話だと理解している。そして、わかりやすく、より早く、よりはっきりと先代を超える業績をあげること……すなわち、罪喰い狩りにのめり込むことも。
 彼女に対する執拗な要求も、手っ取り早く戦果を挙げるためなのだろうし、だからこその不安もある。きっと、先代ならばそんな心配をする必要すらなく、万全の状態で心置きなく戦える環境をきちんと整えてくれたに違いないと思えるだけに、なおさらだ。
 クリスタリウムは彼女自身の意志を尊重するつもりなのか、あくまで『支援者』である姿勢を崩さない。そのため、ユールモアの度重なる無茶な要求を受けるにしろ拒絶するにしろ、そのたびに彼女自身が対応しなければならなかった。まだ十代の若い少女にとって、幾度となく繰り返される折衝が、負担にならないはずがない。今の自分の立場は、いかに彼女が慕ってくれようとも、公式にはただの護衛にすぎず、疲弊する彼女をただ見守るしかなかった。
 彼女を養女とすれば、当然ユールモアの口出しはより激しくなるだろう。だが代わりに、養父として正式に、間に立って彼女を護ってやることができる。妻帯していない自分に『娘』が出来るというのもおかしな話だが、築き上げつつある自身の名声、それに老いたとはいえ将軍である父の名を使えば、それなりの波風は防げるはずだ。
 少しでも健やかに、憂いなく『彼女』が生きれるように。それだけが望みだった。その為ならば、己の名も地位も、命ですらも、彼女の盾として利用することに躊躇いはない。
「だから……む、どうした?」
「いえ、その……嬉しいんです」
 話の途中でへにょりと笑み崩れた彼女に、困惑の眼差しを向ける。今は彼女を養女として迎え入れる政治的な意味合いや、彼女の受ける利益と不利益とを説明しただけで、喜ぶようなところはなかったはずだ。年頃の娘の考えることは分からないと内心首をひねっていると、少女は照れたように笑みをこぼした。
「先生のこと、お父さんってこんな感じなのかな、ってずっと思ってたから……本当に『お父さん』になるなんて、夢みたいで」
「……そうか」
 彼女の実父は彼女が生まれてまもなく、実母は彼女が巫女となってすぐに、亡くなっている。肉親との縁の薄さについて、彼女自身が口にすることはなかったが……口に出さないだけで寂しく思うこともあったのだろうと、今更ながらに思い至った。周囲の兵士たちも彼女に対し、決して冷淡ではないが、かといって『家族』と呼べるほどに親密というわけではない。そんな、他人に囲まれた環境の中で、彼女が孤独感や疎外感に苛まれずに真っすぐ成長したのは、何よりも彼女自身の善良さに助けられた面が大きいだろう。
「気づいてやれず、すまなかった」
「あっ、ごめんなさい、あの、わたしが勝手に思ってただけなので、先生は何も悪くないです……!」
「それでも、だ。お前を守り導く大人として、至らぬ点があったのは事実だ。だが……そうだな、今後は要望があれば遠慮せずに伝えて欲しい。家族となるのだから、なおさら気遣いは無用だ」
「……そっか。わたしたち、『家族』になるんですね……」
 じんわりと幸せをかみしめるように、少女が小さく呟いた。大切で大事な宝物を慈しむかのようなその表情に、もっと早くに思いついていれば、と小さく胸が痛む。けれど、これからでもまだ間に合うはずだ。当たり前の、『巫女』としてではない普通の娘が得られるはずの幸せを、少しでも彼女が得られるように。
「お前に異存がなければ、明日にでもクリスタリウムとユールモアに話をしてくるが」
「あ、はい。じゃあお出かけの準備を……」
「いや、オレだけで行ってくる。お前はここに残れ。道中、危険が無いとは言い切れん」
 ほんの数日とはいえ、傍で護ってやれないことに不安は残る。けれどもそれ以上に、彼女を連れまわすことのほうが気にかかった。
 護衛をつけるとはいえ、移動中はどうやっても、彼女の安全面に不安が残る。魔物の襲撃、罪喰いとの遭遇、決して良いとは言い切れない治安と野盗の出現、それから――。
(さすがに、無いだろうとは思いたいが)
 ユールモアがどう動くか判断がつきかねる現状では、万全を期して後手に回るより、迅速に事を運ぶのが良いはずだ。彼女を連れれば護衛を含め大所帯にならざるを得ないし移動速度も出せないが、単身アマラを駆ればさほど時間をかけずに回ることができる。
「明日、日の出とともに出発するが……見送りは不要だ」
 自分がいなくても、きちんと食事と睡眠をとること。余計なことはせず、なるべく部屋から出ないようにすること。ひとりで城の外には絶対にでないこと、など。いつものように連ねた小言に反発するでもなく、むしろ彼女ははにかむような微笑を浮かべた。
「はい。……はい。気を付けていってらっしゃい、『お父さん』」
 それが、彼女との最後の会話となった。





 わずか2日。たったそれだけだ。それだけの時間をおいて戻ってきたときに告げられたのは、彼女がすでに亡くなっているという事実だった。
 クリスタリウムに向けて発ったその日の晩に、付近を通った行商人が罪喰いに襲われ、彼女はひとり助けに飛び出したのだという。助けられた行商人は無事だったが彼女は引き換えに深手を負い、夜明けを待たずに息を引き取ったそうだ。
「そういうわけで、君のここでの任務は終了した。戻ったばかりで申し訳ないが、ユールモアに帰投し、待機していてくれたまえ」
「……」
 ユールモアから出向している将校の、いたく上機嫌な様相に、ただ黙って頷くほかはなかった。口を開けば、かろうじて堪えている激情が噴き出してしまうとわかっていた。
(……これが。こんなものが、お前の護りたい『世界』だというのか)
 握りしめた手のひらに、きつく爪が食い込む。
 ――こんな未来もありうるのだと予想したからこそ、せめて保護下に置こうとした。離れている間、決して外には出ないようにも厳命したのも、この事態を危惧したからだ。
 すべてが手遅れではあったけれども。
「な……なんだね?」
 抑えているはずの殺意が、それでも溢れているのだろう。怯えと強者への媚とを含んだ将校の声音がひどく勘に触り……けれども、ぐ、と奥歯をかみしめる。
 感情のままに行動するのは、ひどく容易なことだった。固く握った手の力をほどき、息をつけばいい。間近で相対している今なら、呼吸するよりも速く、目の前の男を『処理』できるだろう。それでも収まらなければ、今回の件に関わったであろう者たちを丹念に探し出し、殺して回るのでもいい。
 彼女の遺体は既にナバスアレンに運ばれたというが、構うものか。墓を暴き、遺体に残された跡から必ず辿れるはずだ。これほどまでに埋葬を急いだ理由を考えれば、隠しきれない陰謀の形跡が残っているであろうと推測できる。あるいは、埋葬さえしてしまえば追ってはこないと、こちらを舐めてかかっているのか。
 そんなものではない。彼女との絆は、その程度ではない。『家族』を殺された憤りが、これで済むわけがない。
(……だが、きっと望まないのだろう)
 最後に見た笑みが脳裏をよぎり、わずかに目を伏せる。
 優しい娘だった。何もかもを飲み込んで穏やかに微笑むような、優しすぎる『娘』だった。今ここで自分ひとりの感情のままに動き、彼女の最期を汚すのは――そんなことが、自分如きに許されるはずがない。
 うっすらと予見しておきながら、防げなかったことも。一時的とはいえ、結果的に彼女の傍らを最悪のタイミングで離れてしまったことも。
 ……『また』、護れなかったことも。
 すべて、自分一人の責であり、己が無能の証だ。自分が永劫に背負うべき罪であり、生きている限り忘れえぬ過ちだ。
 ならば。
「……了解した」
 短く告げて、将校に背を向ける。
 今度こそ。……今度こそ、必ず。
Comments (0)
Post a Comment
ForumsMog StationOfficial Blog

Community Wall

Recent Activity

Filter which items are to be displayed below.
* Notifications for standings updates are shared across all Worlds.
* Notifications for PvP team formations are shared for all languages.
* Notifications for free company formations are shared for all languages.

Sort by
Data Center / Home World
Primary language
Displaying