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Yuki Nekomiya

Chocobo [Mana]

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小話: 騒々しくも愛しき日々よ 3話

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誤解の無いように注記しておくと、登場人物の言動など基本的に実在の誰かとは異なります。
似ている人がいても、モデルかもしれないし気のせいかもしれません。
くれぐれも突撃などなさらないよう、お願いいたします。



**********



 現在、ツァスが住んでいるのは、所属するフリーカンパニーの家である。そこで生活するうえで必要なルールについては、初日にハルドクールから説明を受けた。たとえば、朝食と夕食はハウスで出すが、昼食は各自で取ること。家事は当番制であること。遠方での冒険などで難しい場合は、早めに伝えておくこと、などなど。
 きりりと生真面目な顔つきで切り出されたので、どれほど厳しい『掟』なのかと内心戦々恐々としていたら、思ったよりも緩くて拍子抜けしたぐらいだ。『共同生活』が当たり前の故郷と違って、こちらはもう少し個人で生きる範囲が広いということなのだろう。助け合わなくても生きていけるということは、それだけ豊かだということでもあり、そんなところからも違いが垣間見えて面白い。
「……よし」
 洗濯籠を前にして、ツァスは小さく気合を入れた。一人で洗濯をするのは、今日が初めてだ。
 西州(エオルゼア)に来て最初のうちは、まずは生活に慣れるのが先だということで、当番を免除されていた。それから、少しずつ西州の生活様式を教わりつつ、家事を手伝いながらやり方を教わりつつ……今日、ようやく一人での当番を任されることになったのだ。些細なことではあるが、きちんとした『共同体の一員』に成れた証のようで、少しばかり誇らしい。
 ともあれ、洗濯である。洗った洗濯物を干す手際の悪さや、干してから乾燥するまでの時間などを考えると、ここでもたもたしている暇はない。改めて洗濯籠に手を突っ込んで洗うべきものを勢いよく取り出したツァスは、崩れた布地の山から零れ落ちたそれを見て――そのまま、固まった。
(こ、これは……!)
 下着、というか直接的に言うならば、肌着である。中でも特に一番下、肌に直接触れるもの……それも下肢を覆うものだとすぐに分かった。
 つまりは「パンツ」だ。
「ひあああ……!?」
 悲鳴じみた声をあげながら、拾い上げたそれを全力で洗濯籠に突っ込み返す。見てはいけないものを見てしまった気がして、ツァスは小さく身震いした。
(なんでなんでなんで!?)
 洗濯籠に入っているのは、フリーカンパニーのメンバー各人の着替えやベッドのシーツとツァスが回収した洗面台のタオル、それだけのはずだ。肌着の類は個人の概念に触れるものだから、各人がそれぞれ洗うことになっている。ちなみに、その時のハルドクールの説明で言われた『個人の概念(ぷらいべーと)』という言葉の意味がわからず、あとでこっそりとエ・ミルンに聞いてみたところ、「その人だけの、他の人には知られたくない、秘密にしたいこと、かなぁ……?」とふんわりした答えを返された。肌着がなぜ秘密になるのかはわからないが、それも西州の文化だと思えばよくわからないなりに納得はできる。
 あと、洗濯に関する注意点としては、魔物の血が付いたものなどは落ちにくいので、洗濯籠に入れる前に各自であらかじめ軽く落としておくこと、だったか。
 それはさておき、パンツである。誰のものが紛れたのかはわからないが、ともあれ、そのまま放置するわけにもいかない。いや、放置しても良いのだが、妙な誤解を招かれても困る。できるだけ迅速に誰のものか特定して、洗濯籠に誤って入っていたことを伝えたほうが、自分にとっても相手にとっても良いはずだ。
 深呼吸をひとつして心を落ち着かせて、ツァスはそろりと洗濯籠に手を伸ばし、先ほど奥へねじ込んだものをつまみだした。
(これ……女性の、だよなぁ……)
 簡単に引きちぎれてしまいそうな細い紐とわずかな布地で構成されたそれは、日常に耐えうる丈夫さには乏しいような気がする。おそらくは、特別な日に着用するものだろう。黒い布のはずなのに妙に透けて見えそうな薄さと、そもそもの布地面積の少なさから、なんとはなしに用途が想像できて、ツァスは慌てて首を振った。今は余計なことを考えている場合ではない。
 びろん、と広げてみる。大きさから、どちらかというと小柄な種族のものだろうと思われた。少なくとも、自分のものよりは小さい気がする。ララフェル、アウラ、ミコッテ、ヒューランあたりか。いずれもツァスから見れば小柄だが、その中のだれ、と特定するのはさすがに難しい。いっそ、一番尋ねやすいエ・ミルンあたりにでもこっそり声をかけて確認してみるのがいいかもしれない。
 そうしよう、とひとつ頷いたところで。
「おや、ツァスくん」
 背後から声をかけられて振り向いたそこにいたのは、ララフェル族の男だった。ハルドクールとはまた違う、飄々とした口調で掴みどころがなく、かなり謎めた人物ではあるのだが、その冒険者としての実力は確かだ。実際ツァスも一度魔物対峙の依頼を手伝ってもらったことがあり、その実力を目の当たりにしている。ツァスにとっては、目指すべき目標のひとつだ。
「それは……」
「あっ、これはっ、その……!」
 その彼の視線が自分の手元にあることに気づいて、ツァスは慌てた。女性の肌着を手にして立ち尽くしている姿なんて、どう見ても怪しい。言い訳をしようとすればするほどエオルゼア共通語が出てこず、ツァスの脳内が空回りし続ける中で、彼はひょいと手を伸ばした。
「僕の下着じゃないですか。無いと思ったらこちらに紛れ込んでたんですね……見つけてくれてありがとうございます」
「えっ、あ、はい……?」
 そのまま立ち去るロロアスの姿を、呆然と見送る。階段を上っていって後ろ姿が見えなくなってから、ツァスはゆっくりと深い深い息をついた。
(……とりあえず……)
 洗濯をしよう。まずはそこからだ。
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