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Yuki Nekomiya

Chocobo (Mana)

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小話: 司祭見聞録

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霊5月1日

かねてより申請していた許可がようやく教皇庁より下りて、旅に出ることが叶うようになった。ここから旅の記録を付けたいと思う。
復興が進みつつある最中(さなか)にイシュガルドを離れることには、正直、忸怩たる思いはある。しかしその分、ひとつでも多くの物事を見て、言葉を持ち帰れるようにしたい。


* * *


 はぁ、と吐息が白く凝る。今日もイシュガルドの気温は低い。ぼんやりと吐息の行方を追って、フェリクシエンは灰色に染まった空を見上げた。雪こそ落ちてこないものの、低く垂れこめた雲は健在で、胸がすくような青空など望むべくもない。
(場所は合ってるはずですが……来ませんねぇ)
 待ち合わせの場所は、イシュガルド下層に位置するエーテライトの傍と伝えられていた。中央にとてつもなく巨大なクリスタルが鎮座しているため見通しはさほど良くないが、訪れた人を見落とすことはさすがにないだろう。
 イシュガルドを訪れる冒険者がエーテライトを利用して現れるたびに、蒼く澄んだクリスタルが僅かなエーテルの光を散らしている。最初のうちはそのたびに現れた冒険者に目をやり、該当人物ではないらしいと知ってそっと目をそらしていたのだが……何回、何十回と繰り返すうちに、またかと目をやることすら億劫になってしまった。
 エーテライトの傍に何もせずに立ちっぱなしなど、目立ちそうなものだが、案外通り過ぎる人たちから向けられる視線はなかった。単にそこまで他人に興味がないというだけかもしれないし、目を向ける余裕がないのかもしれない。だが、いつもの司祭服を旅に適した衣服に改めただけで、こうも『目立たなく』なるものかと思うと僅かな驚きもある。
 良かれ悪しかれ、外見……こと衣服が周囲に与える影響は、思っているよりも大きいものなのかもしれない。共通の衣服、制服、すなわち『所属を現すもの』。司祭服を着ているフェリクシエンが、個人でありながら同時に『イシュガルド正教の司祭』という『立場』に同化し埋没するように。
 けれどそれは同時に、衣服を変えることで組織を、個人を変えることができるかもしれないという可能性にもなる。厳格なイシュガルド正教、それが悪いわけではないけれども、新たな時代を迎えた今、変わるべき部分があるだろうことは理解している。ならば、まずは堅苦しい司祭服から変えてみるのはどうだろうか。人々から親しみやすく見えるような、砕けた服装に――たとえば、そう、チョコボの着ぐるみを司祭服と定義するとか。
(提案したらめちゃくちゃ怒られそうですけど)
 チョコボの着ぐるみはさておき、発想自体は悪くない気がする。機会があれば提案してみるのもアリだろう。
 ぐるんぐるん回していた思考をひと段落させて、フェリクシエンはぶるりと体を震わせた。
(……寒いですねぇ)
 寒さに慣れてはいるものの、だからといって無制限に耐えれるわけでもない。何もせずに佇んでいると、冷え切った石畳から冷気が足先を覆っていくような気がした。路地の片隅に溶け切らない残雪がちんまりと積まれているのも、寒さの一因かもしれない。都市の隅々まで……は無理かもしれないけれども、せめてもう少しきちんと雪を取り除くことができないか、聞いてみるとすれば誰が良いのか、そもそも越権行為にあたらないか。
(……て、今考えることでもない話ですけどね)
 薄い苦笑が緩く浮かぶ。今日、イシュガルドを出立しようとするときに考えることではない。
 もっとも、無事に出立できるかはわからないけれども。
(騙された、ということはないでしょうが……)
 日ごろあまり連絡を取ることも少ない実家がフォルタン家の遠い遠い分家であるという伝手を辿って、フォルタン家を経由して護衛を依頼した冒険者。それが、フェリクシエンの待ち人でもある。フォルタン家から噂の英雄へ、その英雄が属する「暁」という組織へ、そこからまたいくつか経由しての依頼であるため、正直よくわからないことになっているが、ともあれそれなりの実力は持っている冒険者への依頼に成功した、はずである。
 単純な護衛の依頼であれば、他都市に存在する冒険者ギルドを参考に神殿騎士団が設立した「神殿騎士団リーヴ」に持ち込むのも良いのだろうが、何しろフェリクシエンの依頼は「長期にわたる旅の護衛(期間未定)」である。明確に期間と報酬を提示できない以上、神殿騎士団リーヴに持ち込むのも憚られ、個人的な伝手をかき集めねばならなかった。
 護衛の無い旅、というのは論外である。末席とはいえ貴族籍に属し、都市の外をほとんど知らず正教の司祭となった男が一人飛び出したところで、世界を見るよりも先に、魔物の顎が最後の景色となるだけだ。それでは、あまりにも意味がなさすぎる。
 イシュガルドの復興が進みつつある現在、訪れる冒険者の数は増えてきている。それはすなわち、外……イシュガルド、広く見積もって言えばクルザスの外からの知識や経験が流れ込みつつあるということと同義だ。必ずしも有益なものばかりではないが、それ自体は決して悪い話ではないとフェリクシエンも思っている。
 ただ、フェリクシエンにとって歯がゆいのは、それが「常に受け取る一方」であることだった。多くのイシュガルドの民にとっては、竜詩戦争の終わりという混迷の時期を迎えた現在、冒険者たちの話を聞き咀嚼するのに精いっぱいで、それ以上を望むことは難しい。もちろん、いずれはイシュガルドで生まれ育った『冒険者』がエオルゼアの南まで行く時代が来るのかもしれないが、それもいつになることやらわからない状態だった。
 だからこそ、今のうちに少しでも先例を積み上げておきたい。それが、フェリクシエンの旅の動機だ。もちろん、旅が失敗に終わり、どこともわからぬ地で果てるかもしれない。それでも、「イシュガルドから外へ出た旅」という先例があるのと無いのとでは、後の者たちにとっては大違いだろう。
 そして、出来る限り実際にエオルゼア各地を見て、様子をイシュガルドの人達に伝えたい。イシュガルドの外で育った冒険者が持ち込んだ感想とは違う、イシュガルドで生まれ育った者が見て持ち帰る『外の景色』。頼りないとはいえ、イシュガルド正教に属する司祭であった者から語られたのなら、きっと聞くほうの心持ちも変わるはずだ。『余所者』と安易に排斥されることなく、きっとより多くの人に届けられるはずだと思っている。
 そう信じて、正教のためでもあるのだと周囲を説得し、ようやっと出立する許可を得られたのだが……肝心の護衛が居なければなんともならない。もう一度ため息をついて俯いたフェリクシエンの前に、ぬっと大きな人影が立ちふさがった。
 視線を上げたそこにいたのは、イシュガルドでは珍しい、ルガディン族の男だった。背に負った戦斧と合わせて、おそらく冒険者だろうと思われる。まっすぐにこちらを見る強い視線に、はて、と内心首を傾げたフェリクシエンだったが、ややあってなるほど、と頷いた。おそらくイシュガルドにまだ不慣れな冒険者なのだろう。石造りの街並みはいくつかの回廊で結ばれ、高低差もあって慣れるまでは少しばかりややこしい。今までにも何度か、目的地を見失ってうろうろしている冒険者を見たことがある。
 にこり、と職業柄慣れた笑みを浮かべて、男をわずかに見上げる。
「道に迷われたのですか? よろしければご案内しますよ」
「……いや。アンタだろ?」
 にこやかに穏やかに話しかけたにも関わらず、ぶっきらぼうに問い返され、フェリクシエンはきょとりと瞬きをした。自分がなんだというのか。少なくとも自分は人を待っているだけであって、迷子になったからここに居るわけではないのだが、他人からすれば道に迷っているように見えるのだろうか。司祭の身でありながらあてのない旅に出ようとするなど、人生に迷っている言われてもおかしくはないのだが、それを言えばイシュガルド正教全体が指針を失った迷子のようでもあるとさえいえる。そもそも、「人生とはあてのない旅のようなもの」という言葉もあるのだから、もはや人類みな迷子と言っても過言ではないはずだ。
 むむむ、と考え込んだフェリクシエンに、男も厳つい顔に困惑した表情を浮かべた。言葉を探すように視線をさまよわせる様は、どこか朴訥とした人柄をうかがわせる。
「あー……だから。アンタが、依頼人なんじゃないか?」
 補われた言葉に、フェリクシエンの頭に疑問符が浮かぶ。自分が。依頼人。目の前の冒険者。
 ……もしかして。
「ということは、貴方が、私の依頼を引き受けてくれた『冒険者』ですか……?」
「……良かった」
 ほっとしたように小さく息をついた男を、フェリクシエンは改めて見やった。
 さほど報酬を出せないとはいえ、なるべく熟練の冒険者に依頼できるよう頼み込んだつもりだったので、てっきりもう少し年かさのいった人物が来ると思い込んでいたのだが。目の前の冒険者は先ほどの声音からすると、自分と同年代どころか、やや若い年齢のように思えた。とはいえ、かくいうフェリクシエン自身、他人の技量を外見や年齢から推し量れるほど、目利きに自信があるわけではない。勝手に彼を『若輩者』と決めつけるのも、浅慮だろう。
 内心で咄嗟に戒めて、フェリクシエンは姿勢を正した。
「……失礼しました。私の名はフェリクシエンと申します。念のため、依頼内容を確認しますが……無期限の、私の旅の同行および補佐、護衛ということで間違いありませんか?」
「あぁ」
 違うと言われたら困ったことになっていたが、ともあれ、これで無事に尋ね人と合流できたことになる。少なくとも、出立できないという事態は避けることができたようだ。
「旅は不慣れ……というか、これで初めてでして。いろいろご迷惑かけると思いますが、よろしくお願いします。……えぇと」
 今更ではあるが、肝心の名前さえ聞いていなかったことに気づいた。あまりの段取りの悪さに狼狽えるフェリクシエンに、男はあぁ、と短く頷く。
「スフェーン・アイズだ。よろしく頼む」
「はい、スフェーン・アイズさんですね。こちらこそ、よろしくお願いします」
 この旅が長くなるか、短く終わるか、そもそもどこまで行けるか。わからないことだらけだけれども、少しずつ、楽しく進んでいければいいと、そう願った。
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