「暗黒時代、すでに始まっちゃいました」経済思想家・斎藤幸平さんが説く生存戦略
自著を手に、世界の未来を案じた斎藤幸平さん
ニュース番組のコメンテーターとしても活躍する経済思想家・斎藤幸平さん(39)の「人新世の『黙示録』」(集英社)は、50万部超を売り上げた2020年発行の「人新世の『資本論』(同)の続編。前作は「暗い未来をどう避けるか」だったが、今回は「すでに突入した暗黒の世の中をどう生きるか」の話。マルクス主義研究の第一人者に、暗黒社会での生存戦略を語ってもらった。
「明るい未来はもうないです。暗黒時代、すでに始まっちゃいました」。斎藤さんは笑顔とは裏腹のきつい言葉で、現在の社会状況を断じた。「2020年の前作では、大きな危機である気候崩壊に備えるため、脱成長へかじを切れば最後のチャンスがあるという気持ちで書いたわけですよ」
前作「―『資本論』」は世界19か国で翻訳され、50万部を超えるベストセラーに。「あの時から5年。戦争が始まり、インフレ加速、自国優先主義のまん延と、どんどん民主主義も経済も悪くなっていった。そして、気候変動問題の解決は後退。産業革命の前と比べると、24年には年間の平均気温(の上昇)が1・5度を超えてしまい、山火事、大型台風、干ばつなどの被害も甚大になってきた」
斎藤さんは、気候変動による文明の危機はもう後戻りできない段階に突入していると断言。食糧や資源など、物資が慢性的に不足する「恒久欠乏経済」に陥ると予測する。そこで必要なのが大胆な「暗黒社会主義」への転換。つまり暗黒時代に合わせた社会主義で、どうみんなが生存していくのかを説いている。
「気候変動に本気で取り組むっていうのは、資本主義の枠内では無理。投資した膨大な資本を破壊するって意味ですから」と斎藤さん。「一方で米国をはじめとした先進国の政治家、ITなどのエリートたちは、すでに暗黒の時代であるのを理解して『自分たちだけはどう生き延びるか』にフルベットして活動している。我々、こんな人たちに勝てないですよ」
05年に東大理科二類に入学も、3か月で中退して米国へ留学。「当時、マルクスのことは念頭になかった」。同年に米国ではハリケーン・カトリーナの被害があり、斎藤さんも被災地の復興ボランティアに携わった。「人種によって被害の大きさが違った。米国という世界最大の経済大国で、こんなに貧しくて苦労している人が多いのはおかしいと思った」
格差社会で持つようになったいろいろな疑問と経験の積み重ねから、社会主義、マルクス経済学に興味を持った。09年からはマルクスの生地・ドイツで研究。17年に日本に帰国した。
斎藤さんは「日本に帰ってきたのは日本が大好きだからですよ。わたくし、愛国左翼なので」と笑う。最近はテレビやYouTubeの出演が増えたことで左翼の印象を柔らかくしていることを指摘すると「そうでしょ?」と自信の言葉。「メディアを通じて、社会問題を思想で考えるのは面白いなと思っていただければ。私を入り口にしてマルクスも読んでみたいなという人が増えてくれるのが重要だし、僕のできることですよね」と胸を張った。