吉田 直樹氏（FF14のプロヂューサー兼ディレクター）がFF14について書いている本があると知り、「吉田の日々赤裸々。2～プロデューサー兼ディレクターの頭の中～」を読んでみました。
ゲームを扱う週刊誌「ファミ通」に、隔週連載で掲載されたコラムを本にした形です。45～96回が収録されています。
1巻目では主に旧FFIVから新FFIVへの復活までの製作側の裏話が楽しめましたが、今回の2巻目では、主に運営や継続に関する話題が盛り込まれていました。
ISP（インターネットサービスプロバイダー）についてや「グリーンライトプロセス」（商品やプロジェクトの企画立案から開発終了まで、各マイルストーンにゲートを用意し、そのゲートで審査をパスしなければ次に進めないという手法）、「紅蓮のリベレーター」開発秘話や「FFIV」単独となるオーケストラコンサート「交響組曲エオルゼア」開催の裏側の話、準備に1年ほどかかる「ファンフェス」の話などなど、インターネットや運営に関する話から、吉田氏のアルバイト経験や好きな小説の話といったことなど、他にもいろんな話が盛り込まれていました。
私が特に興味深かった内容を紹介します。（詳しくは本書をお読みください、笑）
・採用を落ちたと思った新入社員が採用されたという話で「相手の立場や役職は、仕事の議論をするうえではあまり関係がありません」。「年齢の差に対して敬いは必要だと思いますが、相手の立場や役職を気にしてモノが言えなくならないように」。「議論とは相手を否定することではなく、相手の意図を汲み取り、自分の意見を述べること」（本書より）と吉田氏は書いていました。
・吉田氏のアルバイトで経験した数字には必ず意味がある話。「たとえば、クリスマス。売上は1年でもっとも高くなる。でも、その売上は、お客さんが買いたいと思うものがうちの店にあるかどうか、それによって数字が大きく変わる」。「自分のお店に来るお客さんを、どれだけ知っているかによる。」「つまり、帳簿に現れる数字は、ノートに書かれた数字ではあるけれど、“お店の特性”と“お店に来てくれるお客様の特性”が、数値化されたものである、という意味だった」（本書より）。
・吉田氏はミステリー小説をよく読むそうで、その読み方が興味深かった。詳しい読み方は本書を読んでみてほしいですが、ミステリー小説をあまり読まない私ですが、読んでみたくなりました（笑）。そして、吉田氏の「本は急いで読まないことが大切です」（本書より）は確かにっと思いました。
・ゲームをしていれば疲れる時があることに対して、吉田氏は、「無理して毎日やらなくていいよ。ゲームなんだし、辛いならやめればいい。むしろ、いまはたくさんゲームが発売されるから、ひとつに絞るのはストレスだよ。だから、メジャーパッチが出たら一気にプレイして、飽きる前にパッとやめて、ほかのゲームをやればいいよ。また、メジャーが出たら戻ってくる。僕はそれがいちばんうれしいし、結果、それがいちばん長くゲームをプレイするコツだと思う」（本書より）と答えたそうだ。
・モノゴトを進める際には、そのモノゴトにかかる時間の見積もりをすることが大事。そして、「自分の見積もり精度の甘さは、貴重な他人の時間を奪うことにつながる、という認識を持つことだと思う」（本書より）と。「だから見積もりをする際には、純粋な作業時間だけでなく、自分のサボり癖や、ダラけ、突発的な仕事の割り込みなどを見越して正直に考え、ゆとりを保つ必要がある。そうすれば、“作業の消化に対して、思った以上に時間がかかる”という認識が生まれ、そのぶんだけ早く作業に取り掛かろうとするからだ」（本書より）。ちょっとした休憩時間なども考慮に入れた見積もりにすることも大切ですね。
・テレビドラマ「光のお父さん」のスクエニ視点も書かれていました。
・最後にグッときた話は、特別編の「言葉」。「“言葉”は、とても強い。特に、“相手のことを想って発せられる言葉”は、人の人生を変える」（本書より）。現実もFF14でもすごく大切なことですね。
これらの他にも興味深い話はいろいろありましたが、2巻目となる「吉田の日々赤裸々。2」は面白く考えさせられもし気付きもあって、楽しく読めました。
製作や運営の話も興味深く、何もゲーム業界だけではなく、他の業界や自分たちの生活にも取り入れられることもあったと思います。
そして、やはり、吉田氏の文章センスは羨ましく思いました（笑）。
