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『装いは、刃を縛らない 』

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ルミアレリナ・フィンネス(愛称:ミア)
主人公である、若き冒険者
冷静沈着でマイペース。
普段は目立たないが、いざという時に圧倒的な存在感を放つ。
事情により、子供時代は男の子として育てられた。
人との接し方は不器用で、人に頼るのも苦手。


エレナ・ウィンフォーディア
服飾店アトリエ・ウィンフォーディアの店主。
服の仕立ての腕は一級品で、美容の意識も高い。
穏やかで面倒見の良いお姉さん的存在。
ルミアレリナ、カラディアと仲がいい。


カラディア・ハーウッド(愛称:カル)
ルミアレリナに並び立つ名声の、気鋭の冒険者。
容姿端麗で自信家。
ルミアレリナに対して強い対抗心を抱いている。


【ヒューランシュミゼット】
worn by
ルミアレリナ・フィンネス


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

◆ 装いは、刃を縛らない ◆


 それは、リムサ・ロミンサ海軍主催の公式晩餐会だった。
 ガレマール帝国の侵攻を退け、各国が束の間の安堵に包まれていた時期――それでもなお、次なる脅威の気配が消えぬ頃のことである。

 提督であるメルウィブ・ブルーフィス自らが出席し、上級士官、交易を担う有力商人、そして各地から訪れた貴族たちが一堂に会する、格式ある席。

 それは同時に、戦後の均衡を探るための場でもあった。
 誰と誰が言葉を交わし、どの商人がどの国に与するのか。
 些細な会話一つが、やがて大きな流れを生む――そんな緊張が、水面下に静かに満ちている。

 そこに、ルミアレリナ・フィンネスの姿があった。

 白と黒の装い。
 本来は簡素な衣服であるヒューランシュミゼットを、エレナの手で礼装としてコーディネイトしたものだ。
 柔らかな白布の上に、黒が静かに輪郭を引き締めている。

 あまり華々しい装束を好まない彼女が、なぜ、このような格好をしているのか。
 理由は単純だった。
 この場では、それが必要だったからだ。

 彼女は、ガレマール帝国を退けた功労者として、そして暁の血盟の代表の一人として招かれている。
 この場での振る舞いは、個人の問題では済まず、この場に相応しい姿を求められた。

 出立前のことを、彼女は思い出していた。

 「うんうん……本当に似合うわねえ」
  エレナは、満足そうに頷いていた。
  鏡の前に立たされ、ルミアレリナは自分の姿を見る。
  形として整っている、とは思った。

  だが。
 「そうかな……?」
  それ以上の感想は、出てこなかった。
  それが自分であるという実感が、どこか薄かった。

  


 けれど今、立食の晩餐会場に立つ彼女に向けられる視線は、明らかに普段と違っていた。
 柔らかい声音。
 近い距離。
 丁寧すぎるほどの所作。

 それらすべてを、ルミアレリナは静かに受け止めていた。
 拒否も、戸惑いもなく、この場でどう振舞うべきかを、ひとつひとつ判断していた。

  


 入場の際に、丁寧に案内をしてくれたスタッフの男が、さりげなく近くに控えている。
 彼は、どこか肩の力が抜けた話し方をする人物だった。

「困ったことがあれば、すぐにお声がけください」
 そう言ってくれた彼は、会話の中で、かつて海賊だったと語った。
 今は更生し、この場を支える役人として働いているという。
 この街らしい、とルミアレリナは思う。
 そういう者がこの場を支えていることに、価値を見出していた。

 そのときだった。

「おや……これはこれは」
 滑らかな声が割り込む。

 振り返ると、ひとりの男が立っていた。
 上質な衣服に身を包み、微笑みを絶やさない。だが、その目はどこか軽薄な印象だった。

「噂の英雄殿が、こんな場所に」
 視線が、ルミアレリナをなぞる。
 上から下へ、ゆっくりと。
 品定めするように。

「思っていたより……ずいぶんと、可憐だ」

 ルミアレリナは答える。
「そう見えるのなら、そうなのでしょう」

 男はわずかに口角を歪めた。
「なるほど。随分と素直だ」

 一歩、距離を詰める。
「戦場での姿は聞いている。だが、こうして着飾っていれば――」
 声が、わずかに低くなる。
「少し位の高い酌婦、といったところか」

 周囲の空気が、少し冷える。

 だが男は気にしない。
「戦場で少しばかり見栄えがいいことで、周囲が像を作り上げ、英雄などと持て囃す」

 ルミアレリナは、静かに男を見る。
 反論はしない。
 ただ、観察している。
 この程度の認識を持たれることは、珍しくない。

 男はさらに言葉を重ねる。
「暁の血盟、だったか。あれも得体の知れん連中だ。まあ、帝国の侵攻を退けた功績は認めるが……君は、支援者集めの宣伝ために遣わされたのかな?」

 その言葉に、周囲の何人かが眉をひそめた。
 だがルミアレリナは、動かない。
 男は満足したように頷く。

「功績は認める。私も、幾何かの支援はくれてやってもいい。ただし、私の支援が欲しければ……そうだな、少し、場所を変えて話をしようか」
 そのまま、ルミアレリナの腕を取った。
 強引に、力を込めて。
 ルミアレリナは思考を巡らせる。
(この場での適切な対応は――)

 その瞬間。
「お客様、その方は――」
 先ほどのスタッフが、間に入った。
 穏やかだが、明確な制止。

 男の顔から、笑みが消えた。
「下がれ」
 短く、吐き捨てる。
「場を弁えろ。海を荒らしていた屑が、今さら何のつもりだ?元海賊風情が、高貴なる席に入り込み、そこで息をしていることも許しがたいというのに」
 その言葉は、はっきりとした侮辱だった。
 周囲の空気が凍りつく。

 スタッフは言葉を飲み込み、視線を落とした。
 その姿を見て、ルミアレリナは――

 思考を止めた。
 そして、顔を上げる。

「高貴なる席……?」

 声は静かだった。
 だが、次の瞬間。

 優雅に揺らめいていたスカートの裾が、瞬時に空を切り裂く。
 踏み込みも、溜めもない。
 ただ最短の軌道で放たれた一撃。
 ルミアレリナの脚が、男の顎を正確に捉える。

  


 音は、ほとんどなかった。
 男の体が浮き、次の瞬間には床に転がっていた。
 完璧に制御された力。
 にわかには立ち上がらせず、床を這わせる一撃。
 しかし、大怪我は負わせない。

 静寂。
 誰も、すぐには状況を理解できなかった。

 ルミアレリナは、姿勢を崩さず立っている。
 何事もなかったかのように。

「このドレスは、私を縛るために着ているわけじゃない」
 ただ、それだけを言った。

 男が呻きながら起き上がる。
 顔は怒りで歪み、理性を失っていた。
「き、貴様……! 何をしたか分かっているのか!」

 叫び、視線を上座へ向ける。
「提督! ご覧になったでしょう! この無礼、断じて許されるものでは――!」

 その先に立つのは、メルウィブだった。
 静かに、全てを見ていた。
「……確かに、由々しき事態だ」
 低い声。

 男の顔に、安堵が広がる。
「そうだろう! ならば即刻――」
「英雄にも、そして正しく職務を果たした者にも、無礼を重ねたのは誰だ」
 言葉が、断ち切る。
 男の声が止まる。

 メルウィブの視線は、揺るがない。
「この場は、リムサ・ロミンサの威信を示す場だ」
 一歩、前に出る。
「その秩序を乱した責は、軽くない」

 静かに告げる。
「退場していただこう」
「……なっ」
 言葉を失う男。

 衛兵が迷いなく動き、その身を拘束する。
 ざわめきが戻る中、メルウィブはルミアレリナへと視線を向けた。

 泰然とした声。
「礼は不要だ。これは、この場の問題だ」

 そして、少しだけ目を細める。
「だが、興味深い……あなたは、他の暁の者とは違う」
 言葉を選ぶように続ける。
「国のために動く者とも、組織のために動く者とも違う」

 短い間。
「では、何のために動く?」

 問いは、真っ直ぐだった。

 ルミアレリナは少しだけ考え、
「この世界を、知りたいから」
 そう答えた。

 メルウィブは、静かに頷いた。
「……なるほど」
 それ以上は、何も言わなかった。

 ◇ ◇ ◇

 数日後。
 エレナの店で、ルミアレリナは再び鏡の前に立っていた。
 同じ装い。
 同じ姿。

 だが、少しだけ見え方が違う。
「この姿も、私の一部……でも、全部じゃない」
 ぽつりと呟く。

  


 エレナが、後ろから微笑む。
「うん、それでいいのよ」
 優しい声。
「綺麗なミアも、強いミアも、頭のいいミアも、不器用なミアも……全部、あなた。どれか一つじゃなくていいの」

 ルミアレリナは、静かに、小さく頷く。

 エレナは、少しだけ表情を変える。
「でも、理由はどうあれ、貴族を蹴り飛ばしたこと……ミンフィリアには、ちゃんと謝っておきなさいね」

 そして、言葉を続け、
「それでもし、怒られたら……」
 優し気な表情に戻り。
「ここに戻ってきなさい。カルと一緒に、待ってるから」

 ルミアレリナは一瞬だけ目を伏せ、
「うん」
 と答えた。

 エレナは、くすっと笑って言う。
「カルだったら、きっと、ハイキック一発じゃ済まなかったわね?」
 連れられて、ルミアレリナも笑う。


 鏡の中の自分は、変わらず整っていた。
 今は、それが自分の一部であることを、理解していた。
 だが、すべてではない。

 どれもが、ルミアレリナ・フィンネスだった。



***この創作について***
『装いは、物語を連れてくる ~紡の章~』
蒼天のイシュガルド時点までの時間軸で、一人の冒険者の歩みを中心に、オムニバス形式で描いています。
一部、ChatGPTを使用しています。

↓キャラクター紹介
https://ameblo.jp/momongapeach/entry-12962058428.html
↓エピソード紹介
https://ameblo.jp/momongapeach/entry-12962180205.html


**************
ウインドウズ11で動かなくなったPhotoshopCS2、無理やり動かしてまだまだ現役です。
Comments (4)

Chihaya Akasaka

Gungnir [Elemental]

リアルの会席では(特にこちらがもてなす側では)、たとえ客が無礼であっても、蹴り飛ばすわけにはいかないのですよね…

ですから、スカッとしました♪☺️🎉✨

Nie Nanao

Pandaemonium [Mana]

こんばんはー

種族装備とグラデのスカートの組み合わせ、素敵です。

それで、脚で顎?を狙っちゃうのも、鋭いハイキックでスカートが翻る様も映像的でカッコいい!
新大陸を発見した冒険家でもある提督とのやりとりも、よかったです☺️

前作もコミカルで楽しかったですし、続き楽しみにしてますね。

それではー

Momonga Peach

Mandragora [Meteor]

Chihayaさん

あの貴族の嫌な奴っぷりの描写には、力を入れました。
ミアが、期待に応えてしっかり蹴り飛ばしてくれたので、作者も気持ちよかったです。(メインのキャラは勝手に動きますので)
メルウィブさんもかっこいいですね。

住んでいるところが地方だからかもしれませんが、昔ながらのセクハラなども、一部にはまだあると聞きます。
創作の世界では、スカッとしたいですね。

だいたいの場合、Momongaが頑張るほど日記の反応が悪くなりがちなのですが、ミラプリの場合は、どうやら頑張ったほうが反応がよくなるようです。

Momonga Peach

Mandragora [Meteor]

Nieさん

手持ち&マーケットボードで安くで入手できる服で、社交界のドレスっぽいのを探したのですが、結局、初期装備がいちばんそれっぽいなということになりました。
ゲームのステージを進めればいろんな服があるのでしょうけども、手持ちでどうにかこうにかするのも楽しいものです。

ドレスを着て、最初は場に合わせて静かに振舞うけども、どっかのタイミングでキレて暴れる、とう光景は、この主人公が生まれたときからイメージの中にありました。
まだ一発目で、この先もまだあると思いますが、とりあえずひとつ形にできました。

ただ、キックのSSには、いまいち納得できてないですね。
意外と、普通のハイキックの戦闘モーションがありませんでした。
姿勢観察的には、あの体勢は、後ろ回し蹴りなんですよね。

関西弁キャラは、思い付きの勢いだけで出してみたようなとこもありますが、コメディ回の反応もいいので、再びのク・リラの登場も遠くないでしょう。
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