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Yaduru Shira

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【ワシのヒカセン冒険記】第7話【FF14二次小説】

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■あらすじ
過去の虚像、これから観る果ての先。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【Lodestone】、【Pixiv】で多重投稿されております。

Twitter■https://twitter.com/hisakakousuke
Blog■https://sakatatsunorou.blogspot.com/
Pixiv■https://www.pixiv.net/users/2277819

第1話→https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/34040203/blog/4661663/
第6話→https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/34040203/blog/4700891/
第8話→https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/34040203/blog/4714008/

◇◆◇◆◇>>><<<◇◆◇◆◇





ワシのヒカセン冒険記 第7話


「ジロウさん……だから言ったじゃないか、ワシらじゃ無理だって……」

 ――その風景が夢だと気づくのに、幾許かの時間を要した。
 エオルゼアではない、どこか別の世界。遠い遠い異郷の地。その世界ではどこにでも見られる、故郷を捨て、家族を捨て、人生を捨てた者が集う荒れ地。
 そこに、一人の老爺が血塗れで蹲っている。ワシはその人物を知っていた。
 上手く行かない人生から逃げ、最早路傍の石より価値の無い空虚な未来を見つめて過ごしていた、抜け殻のような、併し煮え滾る闘志を隠せない老爺。
 エオルゼアで観る事は終ぞ訪れまいその人物は、絶え絶えな呼気を漏らしながら、懸命に歯を食い縛って呻いている。
「……カッ、だったら、何もせずに、黙って死ぬのを受け入れろってのかい……?」瀕死の重傷の老爺は、どこにそんな力が残っているのか、皮肉っぽく笑いながら血反吐を吐き捨てた。「ワシらが、ただ生きるだけで邪魔だってんなら……戦うしか、あるめぇさ……」
 虫の息の老爺の前で立ち竦む老爺は、困惑した様子で言葉を失っている。
 あぁ、ワシは知っている。彼らが何故こんな目に遭っているのかを。何故あのぼろ雑巾のような老爺は、今もなお瞳に炯々と闘志の灯火を宿しているのかを。
 世捨て人に向ける世間の視線は冷たい。街路を通り過ぎる皆の顔色がそれを雄弁に物語っている。人が人に向ける目ではない。害虫でも睨むかのような眼差しで、ともすれば唾棄されても不思議ではない嫌悪の感情を向けられ、老爺はけれど笑っていた。
 彼は戦わなければならなかった。お偉方に、己の住処を追いやられ、追いやられ、追いやられ続けて流れ着いたここですら、追いやられそうになり、どこにも行く当てが無い老爺は、遂にお上に牙を剥いたのだ。
 お上、なんて綺麗な言葉で言い繕ったところで、その内実は人道を外れた者でしかない。都合の良い麗句を並べ立て、逆らうのなら容赦はしないと、人目の付かないところで暴虐の限りを尽くされ、あのざまだ。
「でもよぅ、だからって、ジロウさんがそんな目に遭う必要は、ねぇじゃねぇかよぅ……」
 心配そうに声を掛ける老爺もまた、瞳には涙を浮かべて、曲がった腰を支えるように杖を震わせている。
 行き場が無いからこそ、ここに集った者の一人であり。あのジロウと呼ばれる老爺が立ち向かわねばならないと決意を固めた理由でもある。
 どこにも行く当てが無く、ただ老いさらばえるしかない老爺達が、みすぼらしいながらも懸命に掴み取った安住の地でさえ、お上は平気で毟り取っていくのだ。
 あぁ、だからあの老爺は立ち向かったのだろう。敵わないと知ってさえ、挑まずにいられなかったのだろう。
 それがどれだけ無謀で。どれだけ無意味で。どれだけ無価値だったとしても。
 何もせずに、ただ諦めるのだけは、嫌だったのだろう。
 空は灰色で、ちらちらと粉雪が舞っている。
 やがて数分とせずに、あの老爺は朽ちる。そう未来が囁いている。
 だからこそ、その老爺の最期を看取るように、行き場を失った者達は涙を目に浮かべながら見つめているのだ。
 助けを求めても、助けられる事は無く。
 救いを求めても、救われる事も無く。
 ただ、消え逝く彼を眺めている事しか出来ない。
「……なぁ、ジロウさんよぅ。あんた……本当にこんな最期で良かったのかい……?」
 老爺が震える声で呟きを漏らす。ジロウと言う老爺が死ぬ事を悔やみ、悼んでいるからこその、嘆き。
 ジロウと呼ばれる老爺は、中空を舞う白雪と見紛う程に血色を失いながらも、それでも彼は、歯を食い縛って、――笑みの形に、口唇を刻んでいた。
「……そうさなぁ……カッ、……そうなぁ、誰かを助けられるぐらいに、力が……力が有れば、なぁ……」
 力を欲していたのかと言われると、違うのだろう。
 きっと、己の手で、誰かが救えるだけの力が有れば、救えたのにと。
 そんな悔恨に苛まれながら、それでも懸命にその感情を押し込んで、笑って立ち去ろうとしていただけだ。
「…………ごめんなぁ、ワシに、力が無いばっかりに……」
 そうして、一人の老爺が息を引き取ったのを看取り、静かな白の帳が世界に満たされていく。
 あぁ、そうだったなと。
 それでワシは、何の因果か、エオルゼアなる、異郷の地にて辿り着き、冒険者として…………

◇◆◇◆◇

「……爺ちゃん? どうしたの、ボーっとして」「お疲れですか?」
 意識が飛んでいたのか、目の前にあるツトミちゃんとサクノ殿の顔を見やり、ワシは小さく頭を振って否と答えた。
「……夢を、見ていたようだ」
「えぇー、寝落ちはやめてよねぇ、寝るならベッドにしなよ~」「お疲れでしたら、今晩の会合はお休みにしますか?」
 ツトミちゃんが怪訝な面持ちで指差し、サクノ殿が心配そうに顔を覗き込んでくる。
 ワシは「心配いらぬよ、あれじゃ、エーテル酔いでもしたのじゃろう」と苦笑を交えながら手を振って無事を伝える。
 二人の不審な視線を浴びながら、空咳を一つ。
「……で、何の話じゃったかの?」
「も~、ちゃんと聞いてよね~」ぶぅ~、と頬を膨らませるツトミちゃん。「ほら、わたし達のフリーカンパニー、【オールドフロンティア】だけれど、活動内容が無いって話だけどさ、電波党……じゃなかった、双蛇党から、何かしらの活動が無いと、フリーカンパニーとしてちょっと、ほら、アレじゃん、って言われてたって話」
「あぁ……」
「私も気になってはいたんです。活動内容が無いとの触れ込みで入った身としてはおかしいのですけれど、活動が無いのに、フリーカンパニーって存続できるのかなって」
 サクノ殿が不思議そうな面持ちで呟くのに対し、ワシは言われてみれば確かにと首肯を返す。
「つまり、グランドカンパニーが納得できる活動をせよ、ないし、フリーカンパニーとして存続するに足る理由を明示せよ、と言う訳じゃな?」
「ん~、たぶんそういう事なんじゃないかな」ふわふわとした返答のツトミちゃん。「でもさ~、わたしらって、会合開くのがお仕事って感じしない?」
「流石にそれで双蛇党が納得できるかって言われたら……」難しい表情のサクノ殿。「勿論、会合は大事ですけどね! 寧ろ活動内容は会合ですって言い包められませんかね?」
「サクノ殿は時折強く出るのぅ……」思わず苦笑が滲んでしまう。「……元を辿れば、ワシはこのエオルゼアに自分の居場所が欲しかったのやも知れぬ」
 根無し草な生活が嫌だった訳ではない。冒険者として、色んな世界を観られると言うのは利点にもなる。世界を知り、情勢を知ると言うのは、その世界に根を張る者として、どう生きるかの目安になる。
 それとは別に。ワシはこの世界に於ける拠点……己の帰る場所とでも言うべきものが欲しかったのだろうと、今更のように思い至った。
 それは何も、己の前世に想い馳せたから、と言うのとは違うだろう。
 初めは、記憶が無いのだと思っていた。だが今し方観た過去の残滓……前世の虚像を観て確信した。ワシは一度死して、何らかの力を以てして、或いは何の因果が絡み合ってか、この地に辿り着いたのだ。
 天国や地獄と呼ばれる死後の世界なのかと言われたら、そうかも知れぬとも言える。ただ、その地もまた、生命に溢れた地であり、人々が息づいている豊かな地でもあった。
 第二の生をやり直せと、神仏に諭されたのだろうか。……信仰心など絶無に等しいワシにすら慈悲を与えるとは、何とも慈悲深い神仏も有ったものだと思わずいられないが。
 あの時のワシは――――助けられなかった、救えなかった。人を救う……それは傲岸と言われても仕方ない事かも知れない。ただワシは、目の前の困った誰かに差し伸べられる手が有ればと願い、――その力を持って、この地に辿り着いた。
 天命が、ではなく、ワシ自身がどうしたいのか、己が心臓に尋ねずとも分かっていた。
「……そうじゃの、――慈善活動、ではどうかな?」
 困っている人に、手を差し伸べる。ただ、それだけを活動理念に。
「ワシらは互いに、話し合う、触れ合う事で助け合うように。グランドカンパニーや冒険者ギルドが提示する依頼を、受けられる範囲で受けて、困っている人に手を貸す。……と言うのは、どうじゃろうか?」
 ツトミちゃんもサクノ殿も、互いに頻りに頷き返した後、同時に肯定の意を示した。
「良いと思います!」喜びの表情で手を合わせるサクノ殿。「グランドカンパニーも納得するでしょうし、私もそういう活動が出来るなら遣り甲斐が有ります!」
「うんうん、わたし達らしくて良いんじゃないかな。エレちゃんも、うんうんって頷いてくれそうだし」満足そうに頷くツトミちゃん。「とても冒険者らしいし、何より爺ちゃんらしい!」
「……二人が良いなら、……いや、この場にはいないエレット殿も納得してくれるなら、ワシも言う事は無いのぅ」
 エレット殿は、普段通り忙しくて会合には欠席しているが、大事な仲間である事には変わりない。また会う機会が有れば、その時にでも伝えておこうと頷く。
 吐息を漏らして、大きな目標だったものが、緩やかに形を失っていく感覚に浸る。
 己の記憶を探す旅をしようと思っていたのだ。このエオルゼアは、全くの未知の世界。故にこそ、どこかにワシが追い求める、失われた記憶の源泉も有ると信じていた。
 けれどそれは、何の脈絡も無く、白昼夢と言う形で詳らかにされ、探す必要の無い、探しても見つかる事の無い事柄なのだと理解してしまった。
 併し、目標を失ったのであれば、新たな目標を制定すれば良いだけの事。
 フリーカンパニーを立ち上げたのだ。人員も今なお募集している。これからもっと色んな事が起こるだろう、そんな確信が有る。
 冒険者として、フリーカンパニーの長として、……一人のアウラとして。
 困っている誰かに手を差し伸べる、己の力の限りを使って。
 そう、新たに決意を固めるのだった。
Comments (2)

Tsutomi Amou

Shinryu [Meteor]

更新お疲れさまですvv

すっかり遅くなってしまいましたm(_ _)m
やっぱり爺ちゃんは爺ちゃんだったんだなぁと思わずにはいられない今回のお話。
ついてきてよかったぜ!これからも頼むぜ爺ちゃん!!

今回も楽しませて頂きましたー
次回も楽しみにしてますよーvv

Yaduru Shira

Shinryu [Meteor]

>Tsutomi Amouさん
感想コメント有り難う御座いまする~!

いえいえ~! 感想コメントして頂けるだけで嬉しさMAXでする…!( ´∀`)bグッ!
やっぱり爺ちゃんは爺ちゃん! やっとこ過去を描写できてほっこりです…!
こちらこそ! これからも頼むぜツトミちゃん!!

今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~!!
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