Character

結局、人の少ないところが一番落ち着く。

年を取ると周囲への注意力が落ちてることを実感する。
就職してからもそこまで人が多くもない地方に住んでいる独身男性は、
街中を移動しているとき、周りに誰もいないことが確認できるときはだいたい歌を口ずさんでいる。
ヤバい奴だ、自覚はしている。
誰もいないと思って信号待ちで歌を口ずさんでいる。
それでも近くに誰かが来たら気づけてた、この年になるまでは。
信号待ちで歌を口ずさんでいたら知らぬ間に後ろにおじさんが立っていた。
歌うのが見め麗しい美女ならまだ救いもあっただろう。
30歳を超えたおじさんが街中で口ずさんでいる歌を、
そのまた後ろで聞いていたおじさんはどんな気持ちだったのだろう。
想像もできない、したくもない、思い出したくもない。
いつかも書き記したように独身男性は田舎の生まれだ。
田舎の道路なら歩いている人なんて幽霊か化け狐じゃないかと言われるぐらい珍しい。
歌っていようと誰にも聞かれることなんてなかったのだ。
だが、いま住んでいる場所は都会だ。
蛇足だが、賃貸の部屋でも笑い声がうるさいと隣室から怒られたこともある。

都会にはなじめない。
独身男性が馴染めるのはやはり物言わぬ野山がお似合いなのだ。

忘れられたオアシスの片隅、草木生い茂る木の下にしゃがみ込み、一人心を落ち着かせる。

決してミコッテ♀の水浴びを覗こうとして隠れたわけではない。

私が精神を統一していた場所、視線の先に彼女たちがいただけです。
他意はありません。

独身男性の供述調書より