語る言葉を持たず
という事でスクリーンショット中心の日記です。
この間、私が一方的に憧れているプレイヤーさんをキャラクター検索したのですが、数日前に検索した時のまま装備が更新されていませんでした。
……数日前も、数週間前も、数ヶ月前も……。
もう、ずっと同じ装備のままで更新がないんです。
育成中だったと思われるジョブのレベルも変化がありません。
はい。わかっています。
もうログインされてないんですよね。
別に会ってフレンドになりたかったわけでもないですし、一緒にダンジョンに潜ってみたかったわけでもないんですが……。
ただ、この世界の何処かで冒険しているんだなって、同じ空の下で同じ大地に立っているんだなって、そういう感覚が心地良かったんです。
私が本当に初心者でエオルゼアに降りて間もない頃に黒衣森の『 レジー・ローレンス 』を相手に一緒に戦って下さった黒魔道士さま。
FATEを達成してレベルシンクが解除されると同時に、見たことも無いような威力の範囲魔法で周辺の雑魚を焼き払い、此方に向かって片手を上げた挨拶エモートをして、此方がもたもたと敬礼のエモートを返すのを待ってから(これが重要な気がします)、颯爽と黒い大きなバイクのようなマウントに乗って飛び去って行きました。……もう、めちゃくちゃ格好良かった。
知らないプレイヤーさんとの初めての協力プレイだったし、高レベルのジョブの強さを目の当たりにしたのも初めてだったし、エモートを送られたのも初めてだったし、もちろん送り返すのだって初めてだった。
この世界で初めて誰かに認識してもらえた瞬間だったんです。
醜いカラクールの話じゃないですけど、寂しい思いをしていた自分を見つけてくれたと思って凄く嬉しくなりました。
『 あの人のことが知りたい 』
今みたいに何かあればスクリーンショットで記録する癖もついていなかったので記憶を頼りに名前を検索すると、スマートフォンの画面に凛々しくて強そうなキャラクター画像が表示されるじゃないですか!!
凄い!FF14!キャラクター検索ヤバい!
嬉しくなって即フォロー申請を送りました。
(SNSみたいな物で気軽にフォローできるのかと思ったので……)
その後、レジー・ローレンスについても知りたくなり色々と検索するうちにロードストーンの日記という物の存在を知りました。
ロードストーンというのは磁石のことらしいのですが、私はその語感から『 道ばたに転がっている名もない石ころ 』を連想しました。
私が検索してヒットする日記は五、六年前に更新が途絶えている物が殆どだったので、名も知らぬ冒険者達の楽し気な過去の記録が、道ばたで風雨に晒される『 墓標 』のようにも感じられました。
私も何か書いてみたいな……。
誰からも見向きもされない石ころみたいな存在の私だけれど、この世界に確かに生きていたんだという証しを残したい。
そして……もしかしたら私の冒険ログを、あの人が見つけてくれるかも知れない。
そんな後ろ向きで夢見がちな理由で日記をつけ始めました。
いえ、日記だけじゃなくて、
あの人が私を見つけ易いように、装備品も変えずに、二人が出会ったあの時の鎧を着続けよう。
二人が偶然出会い易いように、グリダニアから出ないようにしよう。
日記はあの人への手紙、あの人にだけ伝わる二人のエピソードやメッセージを散りばめよう。
……こうして、白いヘヴィアイアンアーマーを着てグリダニアを彷徨き回り、意味不明な日記を上げるだけの私のエオルゼアライフが始まりました。
まぁ、「始まりました」なんて書きましたが、もう終わっています。冒頭にも書いた通り、これは終わった記録なのです。
承認されないフォロー申請、更新されないキャラクターデータ、英語で書かれた所属FCの説明文。
私の手紙が届いていないって事は、とっくの昔に気付いていたんです。ただ、認めたくなかっただけです。
新生エオルゼア編が終わり、戦士のレベルがカンストしたことで気持ちの整理ができた気がします。
一旦、全てをリセットしよう。
あの日、黒衣森でテンパードしてしまった私の心を解放してあげよう。
もう一度、初めからやり直して、あの時、あのアウラに出逢わなかった世界線に……。
取り敢えずレベル1に戻りたくて新しいジョブを開放することにしました。
選んだのは剣術士。
新ジョブって武器を装備しろと言われるがままに従うと現状の装備がリセットされちゃうんですよね。
固くガチガチに着込んだフルアーマーが消え去り、ピンク色のロスガルが露になったのを見て我がことながら馬鹿馬鹿しくて笑ってしまいました。
もう、いいや。もう、このままでいいんだ。
レベル1の適正装備など当然とっくに廃棄していていたので裸のまま進めて行くことにしました。
でも、流石にインナー姿はマナー違反だと思うし、何より私自身が恥ずかしいので初期装備のサブリガだけ購入しました。
タンクなのに盾を貰えなくてビックリしたのですが、直前に開放していた暗黒騎士の理念に感銘を受けていたので、盾を持たない剣術士として新しいエオルゼアライフをスタートさせました。
レベル1からやり直した新しい人生。少しずつ以前と違う行動をして、以前と違う未来へと進んで行こう。
蝶の羽ばたき効果と言うのでしょうか。
ループ物の物語では良く耳にする言葉かも知れません。小さな生き物が発生させる微弱な空気の流れが、全く予想外の大きな気象変化を生み出すという意味だったと思います。
ジョブを変えたり装備を変えたり、とにかく、少しずつ違うことをして、あのアウラに心を囚われない世界線に行きたかったんです。
「 オーシャンフィッシングに行きませんか? 」
変化のチャンスは意外と早くやってきました。
その日はフレンドさんの知り合い同士でニーズヘッグに行く予定の日だったのですが、私はレベル1だったので参加する事ができず、そもそもニーズヘッグって誰だろう?などと思いながら、たまに流れてくるLSチャットに返事をしながら応援だけしていました。
ニーズヘッグ戦が終わったらしいフレンドさんからオーシャンフィッシングというものに誘われました。
リムサ・ロミンサで釣りか……。
しかも知り合い同士の八人パーティで!
何それ!?めちゃくちゃ楽しそう!
早速、やり直した行動の成果が表れた気がしました。
テレポートで飛んだリムサ・ロミンサは開放的で美しく、天気が良かったこともあり、どんどん気分が高揚して行きました。
オーシャンフィッシングって、どこに行けば良いんだろう?
エーテライトの広場でウロウロしているとフレンドさんの一人が迎えに来てくれました。
万能ルアーというものをトレードしていただくも、そもそも釣り竿を持っていなかったのでマーケットボードで購入することに。
目まぐるしく流れるパーティチャットを追いながら、オーシャンフィッシングの乗り場を探していると私の身体の回りにエフェクトが……、
知らない方が私に魔法を連発していました。
( 裸で刃物を持っていたので頭が逝かれていると思って回復魔法をかけて下さったんだと思います )
初めての経験に驚いていると、複数名の方々が私の回りに集まって来ました。
( 全員知らない人です )
エモートを飛ばされたので、エモートを返すということをしているうちに最終的には野良ハグしていました。
『 出会って5秒で野良ハグ 』
もしかしてこれがオーシャンフィッシング!?
やったー!入れ食いだ!
永遠なんて無いんだって気付いてしまった私には、エターナルバンドの「 エターナル 」が辛く感じられて、もうエタバンしたいなんて思えなくなっていました。
だから……、こういう刹那的に見ず知らずの他人同士がお互いの肉体だけを貪り求めるようなコミュニケーションが性にあってしまったんでしょうね。
でも、ある日突然ログインしなくなる日がくるかも知れない儚い冒険者人生なんです。こうした一期一会の出逢いを大切にするのも良いのではないでしょうか。
初心者もベテランも関係なく、種族や国籍も関係なく、道ばたで気軽にコミュニケーションをとって、気持ちや身体が合いそうなら野良ハグして、愛や投げキッスを捧げあって……そこには言葉なんて要らないんです。
などということを考えていると、いつの間にかオーシャンフィッシングの出航時間に。
開放していなかった私は当然船に乗ることが出来ず、「 未開放者がいるので参加できません 」というエラーメッセージが表示される中、光の速さでパーティから離脱したのでした。
パーティからの離脱方法を知っていて本当に良かった……。FF14の中で一番ホッとした瞬間でした。
スキさんサラさんロザさんごめんなさい。
みなさんごめんなさい。
オーシャンフィッシングは後日開放して一人で行って来ました。
これぞ蝶の羽ばたき効果とばかりの気候の変動による大嵐の中でNPCの横で釣り竿を振り続けました。
せっかく水着も買ったのに。
でも、その後で晴れてオーロラが見れました。
トンさんが言ってたやつとは絶対に違うと思いますが、綺麗だったので良しとします。
はい、そんな感じの近況報告です。誰かへの手紙じゃなくて、本当に普通のただの日記です。
釣果については……、
良いのか悪いのか分からないです(笑)
おしまい