※この記事は
「あやくも奇行集 第1話」の続編です。
5歳を迎えると、一人前の市民のたしなみとして、チョコボ騎乗訓練が開始される。
私はアヤクモに手を引っ張られるようにして、その授業に初参加した。
すでに私専用のチョコボが用意されていた。
私は人生初のその相棒に、「Bobo」と名づけた。
一通り講師のもう何百回と彼は口にしたであろう堅実かつ通りいっぺんの注意点の説明を受けたあと、私はBoboの背に初めてまたがった。
先輩たち――その中にはもちろんアヤクモもいる――がいっせいにチョコボを駆って演習場の中央ザナラーンから北ザナラーン方面へと走り去っていく中、私もBoboのお腹を両足で強く挟んだ。
初めてにしてはとてもスムーズに、するする駆けていけた。
きっと群れの真ん中ほどに位置して気持ちよく騎乗していたと思う。
…気がついたとき、私は落馬していた。
「あれ? 何が起こったのだろう?」
私は心中不可解なまま、再びBoboの背に移り、群れを追いかけていった。
…また、私は落馬していた。
白魔法のレッスンのときもそうだったのだが、私はうまく魔法を使えなかったとき、従姉のアヤクモの姿を探す癖がついていた。
アヤクモはいたずらっぽく私を目の下を少し膨らませて笑って視線を送り続けていた。
そのとき私の瞳は捉えた、アヤクモの右手にワンドの枝があることを。
「まさか…!」
アヤクモは遠くで頷いた。
「リポーズ?」
そう無自覚に叫ぶと、アヤクモの笑みは肯定するように大きくなった。
…アヤクモは、チョコボ初騎乗の私に、騎乗中、リポーズをかけて居眠り運転させていたのだ。
オスウォルト先生の講釈では、リポーズはたしか30mの射程だったはずだ。
私はアヤクモから目測で30mの距離を保ってBoboを操った。
そうするとどうしても群れからポツンと離れてしまう。見かねたチョコボ講師の男が私の背後からBoboに圧を加え群れの中へと戻そうとする。
…みなとしばらく並走していたはずだが、気がついたときには私は酒房「コッファー&コフィン」の目の前で俯せに倒れこんでいた。私の歯は名も知れぬ雑草を噛んでいた。
百歩譲って、昼のチョコボ騎乗レッスンまではよかったのだ。
昼間よっぽどBoboの背の上でお昼寝していたせいか、私は夜、寝台の上でなかなか夢路につけない自分を感じていた。
明け方、私はうつらうつらできた。
翌日も、チョコボの騎乗練習に参加する。
アヤクモは、遠くから私にリポーズをかける。
私は居眠り運転して落馬する。
そして夜、眠れなくなるのだ。
…それが三日続いた。
不眠は人体に恐るべき作用をもたらす。
明け方うつらうつらできたときと、起き上がって目を見開いたときとで、何の差異も感じられなかった。
日中の活動時、私は夢の中にいるのかいないのか、判断がつかない。
うつらうつらしていたときでも、どれだけ微睡めていたのか、さっぱりわからない。
私は三日目の夜、アヤクモの寝室を訪った。
「アヤクモさん、リポーズをかけて、私を朝まで眠らせて。お願い」
アヤクモは釣り竿に魚がかかったときみたいな表情をした。
「いいよ。リポーズかけてあげるから、思う存分眠りなさい。ただし私の言うことを復唱してね」
「復唱?」
「こう宣誓してね。Kira KikiはAyakumo Mayutokiの奴隷です」
「え!?」
「言わないと眠らせてあげない」
私はしばし迷った。
不眠地獄からの脱出は、私にとって懸案の課題だった。
「Kira KikiはAyakumo Mayutokiの奴隷です…」
「はい、よく言えましたね。ご褒美に朝までキラキーナをぐっすり眠らせてあげる♡」
アヤクモの枕元のワンドが動くのを見つめながら、私は望んだ暗い世界に意識が運ばれていくのを感じていた。
それからアヤクモによる私の「洗脳」は日々続いた。
「また眠れないの? そうだなー、私の好きな『ラブライブ!』見てくれたらリポーズかけてあげる☆」
「…これから『ラブライブ!』徹夜で見てきます」
私は『ラブライブ!』のシーズン1と2の途中まで見た。昼間チョコボの上で寝ているから夜の私の神経はギラギラに輝いていた。
「…『ラブライブ!』、シーズン2の途中まで見ました」
「おや、よくできましたね。でも見たっていう証拠がほしいかなぁ?」
「にっこにっこに―!」
「そこ拾うの?」
「腕立て伏せしながら100%のスマイルを維持しています!」
「アハハ。ちゃんと見ているのは伝わってきました。キラキーナ、たんとお休み♡」
私はアヤクモにリポーズをかけてもらいたんと眠った。
「シーズン2見終わった?」
「まだです…」
「じゃあFCチャで私をアイドル扱いしてくれる?」
「します!」
私は翌日のFCチャットでアヤクモがinすると「こんばんは!キャァ♪(*ノ∀ノ)アイドル!」と打った。
「よくできましたね♡」
私はアヤクモにリポーズをかけてもらった。
「キラキーナ、私とアイドル活動するよね?」
「します!だからリポーズかけてください」
「約束よ?♡」
私はリポーズをかけてもらった。
今、私はアヤクモとのユニットアイドルの楽曲を制作している…。
次回、
「エオルゼア総アイドル化計画!」、お楽しみに!☆