静寂が満ちる部屋に、アリゼーの小さな溜息が落ちる。
──手がかりが、何ひとつ見つからない。
ウルダハの錬金術師ギルドも、グリダニアの幻術士ギルドも、協力を惜しまなかった。それでも、倒れた仲間たちは目を覚まさない。
原因すら掴めず、ただ時間だけが過ぎていく。
「こんなときに、ヤ・シュトラやウリエンジェまで倒れちゃってるなんて……」
呟いた言葉に苛立ちが滲む。アルフィノの行方もわからない。どこから手をつけるべきか、何を糸口にすればいいのか──
「大分、深刻なようね」
不意に響いた声に、アリゼーは振り向いた。
「クルル!」
「仲間が倒れたと聞いて、駆けつけないわけにいかないでしょ?」
軽く微笑む彼女に、アリゼーの胸が少しだけ軽くなる。
「ありがとう、クルル。とても心強いわ」
「それにしても、アルフィノくんが帝国に向かうなんてね……相変わらず突飛なことをするわ」
そう言うクルルの目が、少しだけ懐かしさを帯びる。
「彼の自己紹介、覚えてる?」
アリゼーは目を細めた。
思い出すのは、かつてのアルフィノの言葉──
「『私には夢がある、それはこの世界を救済することだ!』」
今では本人も恥ずかしがっているけれど、あの頃のアルフィノは本気だった。
そして今も、その夢を追い続けている。
「一貫してるのはいいけど、たまに大きな失敗もするから心配なのよ」
「でも、彼は思っているよりずっと大人になったわ。……誰かさんのおかげでね」
クルルはそう言って、奥の部屋へと入っていく。
しばらくして戻った彼女の顔には、微かな困惑が浮かんでいた。
「肉体的には健康そのもの。でも、意思の力が感じられない……まるで、魂が抜けてしまったかのよう」
「それって……カヌ・エ様も言っていたわ」
「アリゼー、あなた前に『声』を聞いたとき、違う空間に立っているような感覚に襲われたんでしょ?」
静かに、けれど確信をもってクルルは言う。
「魂が、どこかに呼ばれているのかもしれない」
「そんな……魂が消えた人を探すなんて、雲を掴むような話じゃない」
「確信はない。でも、やれることは試さないと」
クルルはふっと微笑むと、視線を遠くに向けた。
「まずは『水晶の目』が必要ね。マトーヤ様のもとへ行きましょう」