Character

何の成果もなく帰路につく。
帝国兵との遭遇がなければ、今頃仕事を終えていただろう。
ま、自分達の命を危険にさらしてまで無理をする必要はどこにもない。
引くときは引く。 生き残るにはこれが肝心だ。

この砂丘を越えれば、私たちのキャンプが見えてくる。
もう一息。

先行し、すでに砂丘の上に到達しているキリシロの背中を見る。
少し様子がおかしい。
体に力が入りこわばっている様に見える。

警戒している？

キャンプを見据える彼がぽつりと呟く。

「……あぁ、まったくもって最悪だ。あの煙。あの船。嫌な予感がビンビンするぜ」

私とメリエッダもキリシロに追い付きキャンプに目をやる。
黒い煙がキャンプを包み、その上空に帝国軍の黒鉄の飛空挺が停泊している。

「嘘……なんでキャンプに」

困惑したメリエッダの声をかき消すよに船から轟音が響く。

「船が動く！？」

「不味い！伏せろ！」

砂に紛れてじっと待つ。
砂漠に落ちる巨大な影がゆっくりと旋回し、少しずつこちらに向かってくる。

見つかるかもとひやひやしたが、数分のうちに巨大な影は私たちの上を通過し、去っていく。

どうやら、杞憂だったらしい。

「……行ったね」

「一先ず、安堵。だがしかし、だ」

体を起こすと同時にキャンプに向かってメリエッダが走り出す。

「クアードさんッ！……みんなッ！」

彼女に続きキャンプに向かって全速力で走る。

何かがあったことは目に見えている。
だからせめて、大したことが無かったと、笑えるだけの被害であって。

淡い願いを胸に抱き、黒煙渦巻くキャンプへ向かう。