本日、ついにサハギンデイリーを完了し……私はノォヴ親父の家族になった。
かつては人間の返り血で白珊瑚の首飾りを朱に染め上げ、紅珊瑚の海魔と呼ばれ、同族からも恐れられた戦士がいた。
だが、その名は英雄のそれであると同時に……ある者にとっては憎しみの対象でもあった。
ふたりのサハギンがいる。
かつて紅珊瑚の海魔と呼ばれ、深い悲しみに飲まれ、憎しみを捨てようとする男。そしていま紅珊瑚の海魔を名乗り、激しい怒りに飲まれ、悲しみを忘れようとする男だ。
サハギン族の物語は、このふたりを中心に進んでいく。ノォヴの育成地に身を寄せる幼い「息子たち」も、その物語を彩るが、彼らはあくまでも「脇役」でしかない。
ストーリー自体は、そこまで珍しいものではなかった。そして演出に関しては、それほど質の高いものではないとも言えるだろう。
しかし、ふたりのサハギンから語られる、ふたりの過去……同じ想いの故に武器を捨てた男と、武器をとった男。
魂を揺さぶる熱い信念に、私は涙した。
紅珊瑚の海魔は、己の過ちを、それゆえに失った尊いものについて冒険者に語った。
サハギン族の女王より与えられた、数々の卵と広大な育成地。その褒美に戦士としての誇りは満たされた。
しかし、その育成地は恐るべき「紅珊瑚の海魔」の留守を狙った、人間の卑劣な報復によって無惨にも蹂躙される。
「私は大洋となるほどに涙を流した。そして幾重にも重なった息子達の遺体、砕かれた卵の中から、人間が見落とし、辛うじて無事だった卵だけを抱いて……この地へと辿り着いた」
このとき紅珊瑚の海魔は語らなかったが、その惨劇を目の当たりにしたのは、彼だけではなかった。
「あの時アンタは、人間に復讐をしてはくれなかった。だから俺は力を求めた。かつてのアンタのような……誰にも負けない力をだ!!」
ふたりは衝突する。
無惨に殺された子供たちの亡骸を前に、ふたりのサハギンは涙し……
息子を失った男は悲しみの連鎖を終わらせるために、武器を置いた。自分が堪え忍ぶことで生き残った息子たちを守るために。
兄弟を失った男は、憎しみの連鎖を終わらせるために、武器をとった。自分が復讐することで死んでいった兄弟たちに報いるために。
ふたりは……衝突する。
この戦いの結末、誇り高き戦士たちの物語については、是非とも自分の目で確かめてほしい。
リアルタイムで一月に及ぶ時間が、はたして長いのか短いのかは私には分からない。
ただ私にとっては、それ以上の価値があった。
人間には分からない表情を浮かべ、ノォヴの親父は冒険者を迎える。
「よく来たな。息子たちにお前の冒険の話を聞かせてやってくれ。私はいつでも、この地を訪れるお前を歓迎しよう。何故なら……お前も私の大切な「家族」なのだからな」
誇りとは、愛とはなんだろうか。
戦士であり続けることだけが、戦士の誇りではない。激しい憎しみも、深い悲しみも忘れたわけではないと紅珊瑚の海魔は語っていた。
「だが、そんな憎しみなど……子を愛するということとは比べるべくもない」
たった一握り生き残った息子達が、その男を復讐の鬼にはさせなかった。
そして……今日からは私も「ノォヴ親父の家族」だ。この誇りを胸に、その魂のあり方を自らに問い続けていきたいと思う。
フスィー!!