本記事は、『蒼天のイシュガルド(パッチ3.0)』に関わるお話です。ネタバレにしないためには、
LV55くらいまでのメインクエストをクリア
してから閲覧いただくと良いかと思います。
また、使用している資料は『エンサイクロペディアエオルゼア(以下ENと略)』、『FF14 Fan Wiki』、ロドストの個人の日記ほか、ゲーム外にある情報も活用しておりますこと、ご了承ください。氷の宵闇、吹雪の砦訪問記【前編】氷の宵闇、吹雪の砦訪問記【後編】氷の宵闇、吹雪の砦訪問記【補遺】手記の日英比較レポート【前編】はこちら【前後編・目次】Click to showClick to hide
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【補遺 後編・目次】――――――――――――
■概要■
■パスカルレー・ヌールタイユの手記・2■ 4:新鮮な肉 4-1:日本語版
4-2:英語版
4-3:比較 5:記述者の子供 5-1:日本語版
5-2:英語版
5-3:比較■救援要請の謎■ 1:日本語版
2:英語版■おわりに■――――――――――――
◆ダスクヴィジル、真上から
■概要■ ダスクヴィジルは西部高地の北端に位置する砦である。第七霊災の影響で崩壊、内部では反乱が起きて部隊は全滅、廃墟となった。今回はvigilほか言葉に注目しながら、ダスクヴィジルを概観し、内部を訪ねる。また、ユヘルメリック卿を中心に、兵士たちの当時の状況、事件とその理由について考察する。最後に補遺として、キープ内部に散らばっているヌールタイユの手記の断片に関して、英語版の内容を紹介し、日本語版との比較を試みる。 前編に引き続き、パスカルレー・ヌールタイユの手記の英語版をご紹介し、比較検討していきます。
■パスカルレー・ヌールタイユの手記・2■4:新鮮な肉4-1:日本語版雪と氷によって孤立した砦内で、反乱が起こった。
備蓄食料が底をつきつつあることを知った兵たちが、
ユヘルメリック卿に、撤退を進言したのがきっかけだ。
だが、卿は砦の維持に固執し、これを拒否。
凄惨な戦いになり、多くの命が失われてしまった。
唯一の救いは、新鮮な肉が手に入ったことだけか……。4-2:英語版Ser Yuhelmeric has taken me into his confidence. He says I am an honest man. I wish I were a braver one.
The mutiny has been quelled. Among the starving, half-mad knights were Ser Yuhelmeric's most trusted officers. He wielded the axe himself.
Ser Yuhelmeric received me in the chapel afterwards. I told him we will not last a fortnight without food. He smiled and told me that the Fury has blessed us with a bounty of fresh meat, then returned to his prayers. I joined him.ユヘルメリック卿は私に秘密を打ち明けた。彼は私は「誠実な男」という。私はなにものをも恐れないものになりたかった。
反乱が鎮圧された。飢餓のなか、半狂乱の騎士たちは、ユヘルメリック卿の最も信頼していた士官たちだった。卿は自ら戦斧をふるった。
その後、ユヘルメリック卿は私を礼拝堂で迎えた。私は食料なしでは二週間もたないといった。彼は微笑み、女神が新鮮な肉をお恵みくださったと告げると、また祈りに戻った。私は彼とともに行った。
4-3:比較 また、日本語版と英語版で決定的に違う文章が出てきました。
日本語版で新鮮な肉を手に入れたと考えたのは、記述者であるヌールタイユです。
英語版ではユヘルメリック卿が腹心の部下、ヌールタイユに計画を打ち明けました。
ユヘルメリック卿の心中には、
1:反乱が起ころうと、そうでなかろうと、部下を殺して食べるつもりがあった
2:反乱を鎮圧するにあたって、死体を食用にする意思が明確にあった のどちらかを考えていた可能性があります。
1:は、ちょっとうがちすぎなのでは…と思うのですけれど、私の訳が盛大な誤訳でなければ、あり得てしまいます。
2:は、ユヘルメリック卿の命令はハルオーネの命令であり、逆らうのは指揮官への反逆であり、神への反逆に値すると考えていたなら、その処遇は苛烈になりそうです。
あるいは、死んだ部下を食べることで、自分とともにハルオーネの加護を得て、奮闘しようと思ったのかも知れません。
卿はヌールタイユに心中を吐露しています。「taken me into his confidence」は、信頼に足る人に秘密を打ち明ける、胸中を吐露するという意味です。なので、部下に恐ろしい計画を明かしたのでしょう。記述者は気持ちを奮い立たせようと願いました。
でもその後、食料が二週間持たないと報告しています。計画を知らされていながらそれでもあえて報告したのは、救援に一縷の望みを掛けたからではないでしょうか。人数が減って食料はしばらく持つのですから、卿の口から救援要請の一言を聞きたかったのだと思います。
この「肉」についての記述は、英語版ではより凄まじい迫力で書かれています。
二行改行があるのも気になります。内容も非常に読み取りづらく、記述者が言葉を濁している様子がうかがえます。
◆惨劇の舞台とみられる作戦会議室
5:記述者の子供5-1:日本語版私は罪を犯した。
穢らわしい罪だ……そう、罪なのだ。
だが、生きるためには必要だった……。
家族の元に帰るには、生き残らなくてはならない。
だが、生きるとは、いったい何なのだ?
奴らは、動いているではないか! 死んでいるはずなのに!5-2:英語版O Halone, pray forgive Your humble servant. For too long have I let fear rule my heart, and in my cowardice have I been party to unspeakable acts.
I know now I shall never see my children again─nor would I want them to look upon their father's face...and what it has become.
I am outside Her grace.おお、ハルオーネよ、どうかあなたのしもべを許し給え。あれからずっと私は恐れさいなまれている…口にするのもはばかられる所業に荷担した私の臆病さに。
もはや、私の子供たちに会うことは二度とかなわないのだ――あの子たちに父の顔を思い出してもらうこともできない…こうなってしまっては。
私は女神の祝福を失った。
◆加護
5-3:比較 最後の部分は日本語版と英語版では全然違います。
罪の意識こそ似ていますが、日本語版は致し方ないこと、人間生活一般のもとでの考えに見えます。
一方英語版では、前段にある卿の秘密の計画を受けつつ、ハルオーネ信仰をもとにした罪の意識にさいなまれ続け、女神への慈悲を乞うています。
さらに、日本語版では死んでいるはずの兵士たちが、妖異にとりつかれて動き出した様子を伝えています。
ですが、英語版にはその記述は全くなく、代わりに、自身の子供たちへの痛切な思いをつづっています。
この部分を読むと、子供たちに逢えないことだけでなく、のちのち父親の顔を思い出してもらえない、それほど子供たちが幼い年齢なのが読み取れます。
■救援要請の謎■1:日本語版 英語版の手記のすさまじさはとんでもないですね。
こうして比較すること自体、大変興味深い発見があったわけですが、新しい疑問も湧いてきました。それは、
ユヘルメリック卿は救援を本当に呼んだのか? ということです。
日本語版と英語版、どちらの記事も「救援要請が出された」ことは記述になく、救援が来ないことだけ書いています。
例えば、救援要請の部隊を皇都へ派遣する命令は、ユヘルメリック卿が出すはずです。
そのことが一切書かれていないので、部下を送り出してはいないとも考えられます。
でも、それでは救援が来ないことを気にしている手記の記述がよくわからなくなります。
こっそり救援部隊の出立を指示する必要はありませんし、もし送り出した事実があるなら、もう少し希望を持った文章が書かれていても不思議はないはずです。
結果、日本語版から考え得ることは、救援部隊は出て行ったけれど、なかなか帰ってこない…というのが順当かなって思います。
2:英語版 英語版ではどうでしょうか。
こちらも大して違わず、来ない救援に気を揉んでいるのですが…。
一連の手記を読むに、もう一つの可能性を考えざるを得ない気がします。
「救援要請をした」とユヘルメリック卿が部下に対して嘘をついている可能性です。
この場合、救援要請部隊の派遣ではなく「リンクパールで本国と連絡を取り合う」方法があり得るのではないでしょうか。
もちろん、日本語版の方でもこの方法に矛盾はありませんよね。
士官クラスがみな持っている可能性もありますが、命令指揮系統を混乱させないため、指揮官のみがリンクパールで皇都と交信できるとすれば矛盾がないです。
となると、救援要請したと部下たちを安心させておき、実際は何もしていなかった…とも考えられます。
撤退命令を出さないユヘルメリック卿の心情に関しては、【後編】の「2-3-1:なぜ卿は撤退を拒否し、砦の死守を命じたのか?」で解説しました。
初めて砦の指揮官として任官され、にもかかわらずドラゴンと戦わずして陥落したなどというのは、特にイシュガルドにおいては極めて無様な醜聞以外の何物でもなく、恥の極みだといえましょう。
家宝の宝石を奉納し、並々ならぬ意欲をも見せていましたから、絶対に容認できない心理状態でもあったわけです。
日本語版からは、そう考えるのがまぁまぁ順当かもと思いましたが、かなり推測に頼っていました。
でも英語版の手記も併せて考えると、ハルオーネの加護をひたすらに祈る、敬虔な信者としての卿の行動がとても目立ちます。「新鮮な肉」の下りにいたっては、狂信者に近く見えてきます。
もちろんこれは極限まで追い詰められたからともいえるでしょうが、手記から伝わる行動や言動は、ハルオーネの加護を本気で信じ、信仰を曇らせないことこそが最も重要だと言わんばかりです。
ドラゴンと戦ってもいないのに陥落しそうな大損害と、その不名誉。最大の砦を任された指揮官としての力量、その不足。それは、己のハルオーネへの信心の不足がそうさせているのだ…そう卿は考えたのではないでしょうか。
であれば、自身が最後の一兵になるまで自力で戦い抜くことこそ彼の最大の信心であり、皇都へ仕えることなのだと思います。
彼は、救援要請をしなかった。部下たちに「救援要請を行った」と嘘をつき、ハルオーネの加護を祈り続けた。 こういう解釈もかなり有力だと思います。
◆吹雪く砦へ
■おわりに■ いかがでしたでしょうか?
日本語版と英語版で、これほどの違いがあるとは驚きました。
英語版でのヌールタイユとユヘルメリック卿の様子の細かさは、特筆に値しますね。
日本語版と英語版とで違いがあることは、過去の旅行でも
プリンセスデーのお花がガーベラなのかデイジーなのかや、
アラグ銅貨が実は青銅だったなどありましたが、わりと些細な単語の違いレベルでしたので、今回はとってもびっくりしました。
今回のダスクヴィジル訪問で、英語版を補遺としてご紹介しましたが、他のダンジョンでもメモや説明など、読めるものがあるIDは沢山あります。それらについても今後日本語版と英語版との比較をしてみたいと思っています。
最後に…ユヘルメリック卿、騎士ヌールタイユ、砦を守った全ての兵士、非戦闘員、軍用犬に黙祷。
次回はトマト巡礼の補遺として、「ゼーメル家の修道僧がトマトを品種改良した目的は何なのか?」を詳しく考えます。
【クルザス西部高地旅行記】
西部高地、第六星暦と第七星暦【前編】西部高地、第六星暦と第七星暦【後編】トマト巡礼【前編】トマト巡礼【後編】五つの不寝番【前編】五つの不寝番【後編】氷の宵闇、吹雪の砦訪問記【前編】氷の宵闇、吹雪の砦訪問記【後編】書き手:おゆき
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■概要■
■はじめに■
■ダスクヴィジル概観■
1:ヴィジルとは
1-1:vigilとwatch
1-2:語根weg
余談:vとw
1-3:watchでない理由
2:砦の崩壊
2-1:第七霊災
2-2:寒冷化
3:城門の外
4:ダスクヴィジルの背面
■ダスクヴィジル内覧・1■
1:キープまで
2:キープの中
2-1:兵士たち
【後編・目次】
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■概要■
■ダスクヴィジル内覧・2■
2:キープの中
2-2:氷の聖餐
2-2-1:反乱
2-2-2:死と教え
2-2-3:カニバリズム
2-3:ユヘルメリック卿の固執
2-3-1:なぜ卿は撤退を拒否し、砦の死守を命じたのか?
2-3-2:なぜ皇都からの救援が、ずっとこなかったのか?
3:keep、dungeon、oblivion、slime…
3-1:キープ(keep)
3-2:ダンジョン(dungeon)
余談:democracyは違う
3-3:オブリビオン(oblivion)
3-4:スライム(slime)
4:キープ外壁
■おわりに■